賃金
賃金の決め方
賃金の額を決める前に、どのような賃金制度にするか検討します。具体的には、賃金を固定給のみとするか、又は固定給+出来高給とするか、固定給は時給制にするか、月給制にするか、等どのような支払い形態にするかを考えます。時給制、日給制、月給制、もしくは年俸制にするかの選択は、社員の働きをどのような時間単位で測ったら適当なのかという考え方によって異なってきます。どのような形態にするかは使用者の自由です。正社員であれば月給制、パートタイマーやアルバイト等は、時給制とするケースが一般的です。賃金制度が決まると次に賃金の額を考えます。
賃金額の決定要素には、(1)仕事の量や内容、(2)労働者の能力・勤務態度、(3)仕事の成果、(4)生計費、などがあり、この要素に地域賃金の世間相場や同業者の賃金水準等を加味して決めることになります。
また、扶養家族がいる者に対して「家族手当」を支給するか等、各種手当の検討も必要になるでしょう。
付表3 都道府県、性、学歴別初任給及び都道府県格差(2-1)
付表3 都道府県、性、学歴別初任給及び都道府県格差(2-2)
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賃金改定
賃金改定は、通常、事業年度が変わるときに行われます。
賃金改定には、通常、会社の昇給制度より賃金が増額する定期昇給と、経済の成長に伴い賃金水準そのものが引き上げられるベースアップがあります。
定期昇給は、従業員の能力や勤務態度・経営状況などを総合的に判断し決定します。
最低賃金
賃金の最低額は、法律(最低賃金法)で定められています。これは、正社員はもちろんのこと、アルバイト、パートタイマー、外国人労働者等、雇用形態の違いにかかわらず、すべての労働者に適用されます。
最低賃金額は、地域ごとに定められており2002年度からは時間額のみの提示となりました。最低賃金額は、都道府県ごとに定められており、627円~766円とばらつきがあります。(平成20年10月現在)賃金が月給制の場合には、月額賃金を月所定労働時間で割って時間額換算した額が、地域の最低賃金額を下回らないように設定しなければいけません。
賃金の支払の5原則
賃金の支払は、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)その全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日定めて、支払わなければならないとされています。これを賃金の支払の5原則といいます。
男女同一賃金の原則
労働基準法では、「労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」としています。差別的取扱いをするとは、不利に取扱う場合のみならず有利に取扱う場合も含むものとしています。
労働基準法では、賃金についてのみ男女差別を禁止しており、賃金以外の労働条件についての規則は、男女雇用機会均等法の定めるところによります。
賃金となるもの・ならないもの
労働基準法でいう賃金とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいいます。
賃金か否かは、労働の対償であるか否かで判断します。任意的・恩恵的な給付(結婚祝金等)、福利厚生施設(住宅・食事等)、企業設備の一環(制服、旅費等)は賃金ではありません。
賃金についての解釈
| 賃金となるもの | 賃金とならないもの |
|---|---|
| 右に掲げるものでも、労働契約、就業規則、労働協約等によって支給条件が明確なもの | 退職手当、結婚祝金、災害見舞金、死亡弔意金等の恩恵的給付(原則) |
| ・事業主の負担する労働者の税、社会保険料の労働者負担分 ・通勤定期乗車券 ・使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に支払われる休業手当 ・育児休業期間中の賃金 |
・制服、作業着等業務上必要な被服 ・出張旅費 ・役職員交際費 ・業務上の負傷により休業している労働者に支払われる休業補償 ・使用者が負担する生命保険料の負担金 ・解雇予告手当 |
実物給与
賃金を通貨以外のもので支払うためには、法令か労働協約に別段の定めがあることが要件となります。労働協約による場合には、労働組合の存在が前提となります。
したがって、賃金としての通勤定期券の支給は、労働組合がなければできません。
割増賃金
労働基準法では、法定労働時間を定めており、法定労働時間を超えて労働させて場合には、割増賃金の支払いを義務付けています。労働基準法で定められた割増率は次のとおりです。
| 時間外労働(週40時間超又は1日8時間超) | 25% |
| 深夜労働(午後10時~午前5時) | 25% |
| 休日労働 | 35% |
| 時間外労働+深夜労働 | 50% |
| 休日労働+深夜労働 | 60% |
たとえば所定労働時間が1日7時間の事業場で9時間労働した場合、超過分の2時間のうち、法定労働時間(8時間)までの1時間については、法律上割増賃金を支給する必要はなく、通常の賃金(月給であれば基本給を月の所定労働時間で割った1時間当たりの賃金)の1時間分の支給でよく、残りの1時間について割増賃金を支給することになります。
なお、割増賃金の基礎となる賃金に、次の7種類の賃金は算入しません(1)家族手当、(2)通勤手当、(3)別居手当、(4)子女教育手当、(5)住宅手当、(6)臨時に支払われた賃金、(7)1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金
農業と割増賃金
農業においては、労働基準法上、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の適用除外となっています。
ただし、たとえば所定労働時間が1日8時間の事業場で10時間労働した場合、超過分の2時間については、法律上割増賃金を支給する必要はありませんが、通常の賃金(月給であれば基本給を月の所定労働時間で割った1時間当たりの賃金)の2時間分の支給は当然必要です。
なお、農業においても深夜業割増は適用除外されていません。具体的には、午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては、2割5分増しの賃金を支給しなければなりません。
固定残業手当
時間外手当の計算を簡素化することを目的として、固定残業手当を導入する会社が増えています。この制度は、残業をしてもしなくても一律固定残業手当を支給するものです。
たとえば、毎月の時間外労働が恒常的に30時間程度ある会社が月額給与20万円で人を雇う場合に「残業代込みで月給20万円」としているケースがあります。この場合、使用者は社員も納得のうえだから問題ないだろうと思っていますが、労働基準監督署の調査が入れば残業代の未払いを指摘されます。
この会社の場合、たとえば基本給15万円+固定残業手当5万円=20万円 という具合に固定残業手当を運用すれば法的に問題はありません。
固定残業手当を導入する際に注意しなければならない点は次のとおりです。
就業規則の給与規定に明記する。
たとえば、「固定残業手当は、固定の時間外手当である」と明記します。
実際に計算して差額が発生する場合は支給する。
なお、就業規則に「差額が発生する場合は別途支給する」旨記載することも必要です。
ノーワーク・ノーペイの原則
労働契約は、自己の労働力を経営者に売る契約とみることができ、労働と賃金が対価の関係にあるといえます。労務の提供がなければ当然に賃金請求権は発生しないのが原則であり、これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。
したがって、所定労働日に欠勤、遅刻、早退などで労務の提供ができなかったときは、一般に社員の都合による労働契約の不履行に該当し、労働の対価である賃金の請求権が発生せず、使用者の支払義務もなくなります。すなわち従業員が遅刻、早退、私用外出等により提供すべき労働を提供しなかった時間があるとき、その時間に応じて賃金を減額することは、ノーワーク・ノーペイの原則から適法となります。
このノーワーク・ノーペイの原則が適用されるのは、月給制、日給制、時給制等の給与体系を問いません。
ノーワーク・ノーペイの原則は、労働契約の本旨から導かれる一般原則であり、労働基準法等が強制しているわけではないので、労使の間で取り決めがあれば、これが優先されることになります。たとえば、就業規則で、遅刻や早退、欠勤等があっても減額しない旨の規定が設けられていれば、賃金の減額はできないことになります。
減給の制裁
「遅刻・早退・私用外出3回で1日分の賃金を減額する」というような給与規定を見かけることがあります。これは、実際の不就労の時間にかかわらず回数によって1日分の賃金の減額をするもので、ノーワーク・ノーペイの原則を超えた賃金減額となり違法です。
ただし、このような取扱いを減給の制裁として就業規則に定め、労働基準法第91条の規制の範囲内で行うのであれば認められます。
労働基準法第91条(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
中途入退社があったときの賃金の日割計算の仕方
月の中途で入退社があったときの日割計算の方法には、(1)歴日による方法、(2)当該月の所定労働日数による方法、(3)月平均の所定労働日数による方法の3通りの方法があります。
賃金計算期間の途中で入社や退社があったときの賃金の計算は、通常日割で計算することになります。計算方法には、上の三つの方法があり、どの方法にするかは、使用者が任意に選択することができますが、中途での入社や退社の都度違った方法で計算をすることのないよう、就業規則等で定めておくことが大切です。
また、日割計算の際には、「基本給のみで家族手当は含まない」とか、「家族手当及び皆勤手当も含む」というように、家族手当等の諸手当がある場合の扱いについても定めておきます。
通勤手当
通勤手当は、労働基準法等の法令で支給が義務づけられていないので、支給する、しないは使用者が自由に決められます。通常、徒歩や自転車で通える距離(概ね2キロメートル以内)に対しては通勤手当は支給せず、それ以上の距離に対して通勤手当を支給しているケースが多いようです。
通勤に公共交通機関を利用する場合で、複数のルートがある場合には、もっとも低額な交通費を実費で支払うようにすればよいでしょう。
なお、通勤手当を支給する場合には、通勤手当は賃金となります。賃金は、「通貨による支払」(労基法24条)が義務づけられているので、通勤定期(現物)での支給は、原則的にできないので注意が必要です。
マイカー通勤者の通勤手当
マイカー通勤者の通勤手当の額は、非課税となる限度額の範囲内で支給するのが一般的です。マイカーや自転車のみで通勤している場合に非課税となる1ヵ月あたりの限度額は、片道の通勤距離のキロ数で決められています。
| 通勤距離(片道) | 1ヵ月あたりの非課税となる限度額 |
|---|---|
| 2km以上10km未満 | 4,100円 |
| 10km以上15km未満 | 6,500円 |
| 15km以上25km未満 | 11,300円 |
| 25km以上35km未満 | 16,100円 |
| 35km以上45km未満 | 20,900円 |
| 45km以上 | 24,500円 |
片道通勤距離が15km以上の人が電車やバスなど公共交通機関を利用して通勤しているとみなしたときの通勤定期券1ヵ月あたりの金額が上表の限度額を超える場合には、その金額が限度額となります。この場合、利用できる交通機関がないときは、通勤距離に応じたJR線の通勤定期券1ヵ月あたりの金額で判定することになります。ただし、1ヵ月100,000円が限度です。
なお、1ヵ月あたりの非課税となる限度額を超えて通勤手当を支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。
農業の場合、電車やバスといった公共交通機関を利用する者よりもマイカー(自動車やバイク等)を利用して通勤する者が多いのが一般的です。この場合、自分のマイカーを使用せず、同僚の自動車に乗せてもらって通勤する者に対する通勤手当の扱いも検討する必要があります。
たとえば「自己の所有する交通用具(原動機付自転車。自動四輪者等)以外で通勤する場合には、通勤手当は支給しない」と雇用契約書や就業規則に明記するのも一案です。
退職者の賃金
従業員から請求があれば、退職後7日以内に支払わなければなりません。請求が特になければ、所定の賃金支払日に支払うことになります。従業員が退職する場合の賃金等の支払いについては、労働基準法が特別の規程を設けていおり、使用者は労働者の死亡または退職の場合、権利者の請求があってから7日以内に賃金を支払い、その他労働者の金品を返還しなければならないことになっています。
したがって、退職(解雇を含みます。)する従業員から請求があれば、7日以内に支払わなければなりません。ただし、請求がなければ、所定の賃金支払日に支払うべきことになります。
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