労働契約
雇用形態と名称
社会構造の変化に伴い、雇用形態の多様化が進展し、現在、就業人口約5000万人のうちの3割の約1500万人が非正社員と言われています。
非正社員の法的な定義はありませんが、トラブルを防止するためにも自社内の雇用形態の区分として、その地位・定義・処遇等を明確化しておくことが重要です。
正社員
いわゆる正社員とは、「期間の定めのない労働契約を締結している労働者」をいいます。
一般的には長期雇用を前提に社員教育と人事異動を通してキャリアを形成させていく労働者です。
非正社員とその種類
反対に非正社員とは、「期間の定めのある労働契約を締結している労働者」であり、次に挙げるように様々な雇用形態があります。
(1)パートタイマー
雇用目的が雇用量の弾力調整の活用(いわゆる雇用の調整弁)にあり、家事・育児等の私生活と調和をとった簡易雇用であり、通常、家計補助的な立場を前提とした雇用期間を定めた短時間労働者です。
また、次のような労働者も一般的にパートタイマーと呼ばれています。
A:短時間労働者であっても、常用化し比較的権限の重い仕事に従事し、企業組織の中に組み入れられている者
B:雇用期間の定めはあるが、労働時間や勤務日数が正社員と同程度で、社会保険にも加入している者
(2)アルバイト
パートタイマーと比較して勤務が不規則または不定期で、所定時間外や深夜等、一般労働者の補てん等に雇用されることも多い、学生・フリーター等を中心とする期間雇用者です。
(3)契約社員
契約社員は、「何が契約関係か」について次の考え方があります。
A:雇用期間に重点がある場合
雇用期間内での勤務義務や一定期間内での成果達成を目的としています。
B:業務の遂行目的に重点がある場合
企画、設計、プロジェクト完成等、一般に、雇用期間を定めた比較的高度の専門職の場合をいいます。
(4)嘱託社員
種々の雇用形態を含む幅広い概念で、多様な雇用形態がこの名称で呼ばれています。
一般には、従事業務を特定し、正社員への転換や登用を予定しない有期雇用契約が通例となっています。
また、定年退職後に再雇用された労働者を指すことも多く、個人請負、業務委託、コンサルタント等も含むこともあります。
(5)派遣社員
A:業務派遣社員
一般に、自社製品の販売促進等のためにデパート等に自社の雇用する店員を派遣して自社商品の説明・宣伝・販売にあたる者等をいいます。
これは労働者派遣法にいう「派遣労働者」には該当しません。
B:人材派遣社員
自社の雇用する労働者を他社に派遣して他社の指揮命令の下に労働に従事させる者をいいます。
「労働者派遣」は、法律(労働者派遣法)で定める「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下で、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を雇用させることを約してするものを含まないものとする」という形態のものが昭和61年から一定の要件のものに認められるようになりました。
(6)研修生
一般的に研修生は労働者ではありませんが、その実態によっては労働者とみなされます。契約内容よりも事実が重要で、名称は研修生でも事業主との指揮命令関係があり、給与の支払等があれば労働基準法の労働者となり最低賃金法等労働基準関係法令が適用されます。
イ.労働者とみなされる場合
受入れと研修生が雇用契約を締結している場合。雇用契約を締結していなくても実態上労働者とみなされる場合。
ロ.労働者とみなされない場合
学校等の正課又は課外活動としての実習の場合。使用関係がなく、労働の対象である賃金も支給されなく研修が主目的で実務を学んでいる場合。
雇入れ時に注意すること
面接のときに質問してはいけない事項
従業員の採用を本人との面接をしないで決めるということは、まず考えられません。面接は、本人の人柄や仕事への意欲などを確認する上でなくてはならない大事なものです。
ところで、面接においては本人に対してどんなことを質問してもいいということはありません。あまり神経質に考えることはありませんが、本人の能力と無関係な事柄や、とくに後々大きな問題になりかねないセクハラまがいの質問などは、絶対にしてはいけません。
面接時にしてはいけないとされている質問事項は、次のとおりです。
本人に責任のない事項 例えば・・
(1)本籍・出生地に関すること
(2)家族に関すること(職業、地位、収入、資産など)
本来自由であるべき事項 例えば・・
(3)宗教に関すること
(4)支持政党に関すること
(5)労働組合・学生運動など社会運動に関すること
(6)男女雇用機会均等法に抵触すること(交際している異性のこと、結婚の予定など)
雇用契約書
労働契約は、法律上必ずしも書面の作成を必要とはしておりませんが、労働契約に際し、使用者は労働者に対し重要な労働条件を書面を交付することによって明示しなければならないとされておりますので、実務的には、労働条件を明示した「雇用契約書」を取り交すことや労働条件を明示した「労働条件通知書」を交付することが後々のトラブル等を防止する上でも必要なことになります。
労働者に明示しなければならない労働条件は下記のとおりです。
必ず明示しなければならない事項
(1)労働契約の期間(期間の定めがない場合は、「期間の定めなし」とする。)
(2)就業の場所、及び従事すべき業務
(3)始業・終業の時刻、所定労働時間を超える勤務の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制における就業時転換
(4)賃金に関する事項(決定、計算、支払方法、締切り、支払時期、昇給)
(5)退職(解雇の事由も含む)
定めをする場合には、明示しなければならない事項
(6)退職手当
(7)臨時で支払われる賃金、賞与等、最低賃金額
(8)労働者に負担させる食費、作業用品等
(9)安全及び衛生
(10)職業訓練
(11)災害補償及び業務外の傷病扶助
(12)表彰及び制裁
(13)休職
上記1の必ず明示しなければならない事項(1~5)については、書面による交付による明示が義務づけられています。(4 賃金に関する事項のうち「昇給」に関する事項は除く。)
身元保証人
身元保証人は、会社に対して身元保証人が従業員の行為によって会社が受けた損害を賠償すること人で、それを約束したものが「身元保証書」です。
身元保証書の有効期限は、期間の定めがない場合は3年で、期間を定める場合には5年が限度となります。ただし、5年以内の期間を定めて更新することは可能です。
労働契約の期間
労働契約は、契約の期間という観点から見てみると、期間の定めのない労働契約と期間の定めのある労働契約(以下有期労働契約といいます。)に分けられます。
正社員は、長期間にわたって働いてもらうための人材ですから、期間の定めのない労働契約、また、パートタイマーやアルバイト等は、繁忙期だけ欲しい人材であったりすることが多いので、有期労働契約とするというのが一般的でしょう。
有期労働契約を結ぶ場合、契約期間の上限は、原則として3年間です。
試用期間
試用期間については労働基準法等法律で定められた規定はありませんので設ける、設けないは経営者の自由です。試用期間は、本人の適正や勤務態度等を観察するために設けますが、従業員にとっては本採用前の身分が不安定な期間ですので、あまり長期間に設定するのは好ましくなく、通常1ヶ月から6ヶ月程度の期間で設けます。
「勤務態度が悪いため試用期間の延長をしたい」というような相談が結構ありますが、一般的に、試用期間の延長を要するタイプの従業員は、本採用すると後々会社が後悔することが多いようです。
有期労働契約と雇止め
有期労働契約においては、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させる等の、いわゆる「雇止め」をめぐるトラブルが大きな問題となっています。
雇止めの効力を有期労働契約の類型ごとに見てみましょう。
| 業務や事業の内容 | 雇止めの可否 |
|---|---|
| 期間満了後の雇用契約の継続の期待のないもの ・私立学校等の非常勤講師、嘱託講師等で、当年度限りとされている場合 ・公共団体等の業務で毎年入札により受注する業務の場合 |
原則どおり契約期間満了によって当然に契約期間が終了するものとして、合意もしくは了解がなされているため、雇止めの効力は当然に認められる。 |
| 雇用契約継続の合理的期待はあるが、3~5年程度の短期間のもの(更新回数等の決まっているものも含む) ・最初から更新限度が予定されている一般的業務派遣雇用の場合 ・一定の期間に所定の技術、能力に達しないと継続雇用の期待のない、航空機の客室業務員その他の専門業務の場合 |
予定されている更新年数の満了や予め定められている更新継続雇用要件から、数年程度の雇用と見込まれるものの場合には、やむを得ない終了事由による雇止めとしての効力が認められる。 ただし、雇止めの予告は必要。 |
| 長期的な継続雇用の期待される状況になっている場合や期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で雇用されていると認められるもの ・ 業務内容が恒常的なものであり、当面業務縮小等の予想されない業務であり、更新手続が形式的となっている場合 ・ 更新手続が怠られており、正規従業員と異ならない形態で業務に継続従事している場合 |
人員削減を行うこともやむを得ないと認められるような特段の事情がない限り、更新を拒絶することは通常の解雇と同視される。 なお、契約更新が形式的でなく、本人の能力、勤務態度、業務量等から毎回更新の可否が個別的に判断されている場合は、雇止めの効力が認められる。 ただし、この場合には事前の雇止めの予告は必要 |
有期労働契約の締結および更新・雇止めに関する基準
「有期労働契約と雇止め」で述べたように、雇止めをめぐるトラブルを防止するために、パートタイマー等を有期労働契約で雇用する場合、労働契約の締結時に、使用者は労働者に対して、当該契約の満了後における当該契約に係る「更新の有無」、「当該契約を更新する場合又はしない場合の判断基準」を明示しなければなりません。
「更新の有無」については、
(1)自動的に更新する
(2)更新する場合があり得る
(3)契約の更新はしない、などを明示することになります。
また「判断の基準」については、
(1)契約期間満了時の業務量により判断する
(2)労働者の勤務成績、態度により判断する
(3)労働者の能力により判断する
(4)従事している業務の進捗状況により判断する、などと具体的に明示することになります。
これらの事項については、書面を交付することにより明示することが望ましいとされているので、労働条件通知書や雇用契約書に記載することになります。
従業員に関する書類
従業員を管理するうえで、必ず整備しなければならない記録はいくつかあり、その中には、書類として法律で備え付けが義務付けられているものもあります。労働基準監督署等の突然の調査などがあっても困ることがないように日頃から整備しておいてください。
使用者が必ず整備しておかなければならない従業員に関する書類は次のとおりです。
- 労働者名簿
(1)氏名、(2)生年月日、(3)履歴、(4)性別、(5)住所、(6)従事する業務の種類、(7)雇い入れの年月日、(8)退職の年月日およびその事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)、(9)死亡の年月日およびその原因
労働者名簿は従業員退職後も3年間の保存義務があります。
なお、日々雇入れられる者については、調製する必要がありません。
賃金台帳
記載する事項は次のとおりです。
(1)氏名、(2)性別、(3)賃金計算期間、(4)労働日数、(5)労働時間、(6)時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数、(7)基本給・手当・その他賃金の種類ごとにその額、(8)賃金の一部を控除した場合はその額
なお、年末調整の際に使用する源泉徴収簿は、記載事項を満たしていないので、賃金台帳としては認められません。また、労働者名簿と異なり、日々雇入れられる者についても、調製する必要があります。
保存期間は3年間です。
出勤簿またはタイムカード
各月の出勤状況が確認できるもの。使用者には、労働時間の管理義務があるので、始業と終業の時刻の記載も必要です。保存期間は3年間です。
健康診断個人票
従業員が健康診断を受けると、実施した医療機関から各人の診断結果が提出されます。使用者は、この診断結果の保存が義務付けられています。この健康診断個人票は、重大な個人情報なので厳重な保管が特に必要です。保存期間は5年間です。
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